2012年03月28日

アミ小さな宇宙人 9

9、スーパーコンピューターと愛の度数について  ボンベイ上空では百メートルほどまで降下し、街の散策を始めた。頭にターバンを巻いた男性や、故郷の国とは違った造りの家々を見た。そして、ペドゥリートは人の多さに驚いた、何処もかしこも人、人、人で埋め尽くされている。ペドゥリートの国のラッシュアワーでも、これほど多くの人は見たことがない。勿論、円盤は不可視化されていた。  突然、ペドゥリートはおばあちゃんのことが気に掛かった。もう昼間だし、この時間には起きていて、自分が居ないことに気がついているかも知れないと思ったからだ。 アミにとってペドゥリートはいつも笑いの種だ。今度も笑いながら、混乱するペドゥリートに、おばあちゃんが目覚めるまでまだ八時間はあると説明してくれた。 そうしてスクリーンにおばあちゃんを映し出し、これ以上ペドゥリートが心配しないで済むようにしようと言った。  アミは、マイクに向って「プシュツ」と声を出した。それを聞いておばあちゃんは起き上がり、ペドゥリートの寝室へ向い、ベッドを確認した。だが、何かが気になったらしい。 アミは直ぐにマイクに向って何か言った。おばあちゃんはそれを聞いて、安心して自分の寝室へと引き返して行った。 「これで安心しただろう」 「うん、でもとても信じられないね。おばあちゃんは向こうで寝ていて、僕たちはここで昼間だ・・・・」 「地球人は余りにも距離と時間に制約され過ぎて、生きているからね・・・」 アミによれば、今日出発して、昨日帰るということも出来るという。 「ところで、中国にも行ける?」 「もちろんだよ。中国のどこに行きたい?」 ペドゥリートは、今度こそ馬鹿にされないようにしっかりと考えて「東京」と答えた。 「じゃあ、東京へ行こう。東京は日本の首都だ」アミは、笑いたいのを堪えて言った。  インドを西から東へと横切り、ヒマラヤ山脈の上空で円盤は停止した。スクリーンに奇妙な記号が浮んでいる。アミは指令が入ったといい、それは何処かの誰かに円盤を目撃させるという任務だと話してくれた。 スーパーコンピューターの指示に従って、瞬間移動をして着いた場所は、一面が深い雪に覆われた森林の上空だった。表示ランプが点灯していて、それはこの円盤が可視状態になっており、見える状態にあることを示している。 そこはアラスカだった。太陽が海に沈み始め、円盤は色を変えながら、空中に大きな三角の軌道を描きはじめた。それは円盤を目撃させる人物の注意を引くためであった。  遠くの木々の間に薄茶色のコートを着て、猟銃を持った男が見えた。彼は驚いた様子で、銃をこちらに向って構えた。ペドゥリートは弾が当たらないように、身をかがめた。 アミはまたも面白そうに、弾やそれ以上のものにもこの゛UFFO゛は大丈夫だよと言った。円盤は少し高度を上げ、上空に滞空して、何種類もの色の閃光を放った。目撃者の男性が、この体験を一生忘れないように、強く印象づけるためだった。 アミによればただ目撃させただけでは、多くの人々はすぐに忘れてしまうという統計が存在するのだという。だから強く印象づける必要があるが、この男性の体験は彼自身かUFO現象に興味がある別の人にとって、何か意義があるのだろうとも言った。 そしてセント・メトロ(感覚計)を充ててみようと言った。 別のスクリーンにこの男性が大きく映り、その胸の中心には殆ど透明で黄金の光がとても美しく輝いていた。 「この光は、一体なんなの?」 「彼の中にある愛の量とでも・・・いやいや、少し厳密でないな。彼の精神における愛の強さの反映とでも言おうかな。またはそれと同時に、その人の進歩度をも表しているんだ。彼の場合、750度ある」 この男性の進歩度は、地球人としてはかなり高い水準にいると告げ、アミは興味深気にスクリーンを見詰めた。 進歩度とは獣に近いか天子に近いか、ということだと言いながら、今度は熊に照準を合わせた。胸の光は弱く、度数は200度だという。次に計測した魚は50度、だった。 地球人の平均は550度だとアミが教えてくれたが、彼自身は760度だという。 あの猟師の男性より僅かに10度だけしか高くないことにペドゥリートは驚いたが、アミは地球人と自分は似た様な存在なので当然だと言った。それから地球人の中でも320度くらいから850度くらいまでの差があることを教えてくれた。  アミよりも度数の高い地球人は幾らも居ると知って驚くペドゥリートに、教師、芸術家、看護師、消防士などと具体的に職業を挙げてくれた。 「消防士!!」 「そうさ。だって他人のために命を危険に晒して働くことは、とても高貴なことと思わないかい」 納得したペドゥリートは、核科学者の叔父さんのことを持ち出した。ペドゥリートは叔父さんが、人類に貢献する仕事をしていると信じていたからだ。とても貴重な人のはずだ。 彼の叔父さんは新兵器の開発に携わっている。 しかしアミの答えは、ペドゥリートをガッカリさせた。 「もし神を信じずに兵器の開発に携わっているとしたら、かなり水準は低いと思うよ」 叔父さんはとても博学な人だと、抗議を込めて言うペドゥリートだが、アミは単に情報を多く持っているに過ぎないと言った。そして、コンピューターは多くの情報を持っているけど、コンピューターはインテリではないことを教え、自分が落ちる穴を知らずに掘っている人が果たして賢明といえるのかとたしなめた。 納得できないが、無理にアミのいうことを信じようとするペドゥリートだったが、頭の中は混乱したままだ。 アミは言う、君の叔父さんは頭の中に優れたコンピューターを持っている、単にそれだけのことだ。同じ言葉でも地球人とアミたちには解釈の違いがあり、地球で賢者とかインテリと呼ばれているのは単に頭脳が優れている人々を言うが、それは我々の持っている脳の内の一つの方だけで、我々には二つの脳があると語った。  アミの言う二つの脳とは、一つは我々も認識している頭脳のことである。もう一つは森の中で見た男の胸に輝く、光を指すのである。アミたちにとって、インテリとか賢者と呼ばれる人は、この頭脳と胸の光が高いレベルでバランス良く調和している人のことである。 頭の脳が胸の脳に奉仕するのであって、地球のインテリのようにその逆ではないというのである。 それでは胸の脳が発達しているが、頭脳が発達していない人はどうだろうか。やはりこれもインテリ・賢者とは呼べず、精々「善良なおバカさん」なのであり、頭脳が先行している悪いインテリにとって、最も騙し易い人々であるだろう。 知性の発達と情緒の発達は、調和を持って進んで行くべきであると、アミは語っている。  ペドゥリートは自分の進歩度合いが気になり、アミに教えてくれるように頼んだ。しかしアミは「それは出来ない」と告げて、ペドゥリートの度数が高くても低くても、それを知ることは決してプラスにはならないという理由を説明してくれた。 筆者も自分の度数が気になるが、例え知ることが出来ても多寡が知れているだろうから、落ち込むだけであろう(笑)


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Posted by inqkoezxkd at 05:21│Comments(0)

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