唐詩【送李判官之潤州行營】劉長卿作
【唐詩】七言絶句<その148> 【題名と作者】 【送李判官之潤州行營】; 「李(り)判官(はんかん)の 潤州(じゅんしゅう)の行營(こうえい)に 之(ゆ)くを送(おく)る」 劉長卿作 ; 「劉(りゅう)長卿(ちょうきょう)作(さく)」 【詩文の読み】 萬里辭家事鼓鼙;萬里(ばんり)家(いえ)を辭(じ)して 鼓鼙(こへい)を事(こと)とす 金陵驛路楚雲西;金陵(きんりょう)の驛路(えきろ) 楚雲(そうん)の西(にし) 江春不肯留行客;江春(こうしゅん)肯(あ)えて 行客(こうきゃく)を不留(とめず) 草色青青送馬蹄;草色(そうしょく)青青(せいせい)として 馬蹄(ばてい)を送(おく)る 【詩の語句訳】 送李判官之潤州行營; 題名 李判官が潤州(じゅんしゅう)の庁舎へ 行くのを見送る。 送 ; 見送る。 李判官 ; 姓と官職。 之 ; 行く。 潤州 ; 今の江蘇省の鎭江。長江の中流南岸にある都市。 行營 ; 駐屯地。官公署の庁舎。 萬里 ; 遙かに離れたさま。長大な距離をいう。 辭家 ; 家を出る。故郷を離れる。 事 ; つかえる。 鼓鼙 ; 軍の進退を伝える攻め太鼓。軍事。 鼙 ; 騎兵が馬上で鳴らすこ鼓(つづみ)。 金陵現 ; 南京。長江の下流に栄えた古都。 驛路 ; 街道。旅路。 金陵驛路; 金陵へと続く街道。 楚雲 ; 長江中流域、湖北、湖南一帯の雲。 長江中流域一帯の地を広く指す。 楚 ; 湖北、湖南から長江中流域一帯の地のこと。 江春 ; 川辺の春の風光。 不肯 ; 積極的には~~しない。承知しない。 肯 ; 心からすすんで。あえて。また。うなづく。 留 ; 引き留めておく。ゆるりと逗留し、停滞する。 行客 ; 出かけて行く旅人。 草色 ; 草の色。 青青 ; 青々と。青々として。 送 ; 見送る。 馬蹄 ; 馬の蹄(ひづめ)。馬の歩調。 【詩の大意】 遙かに家から離れて軍事について。 あなたは金陵へと続く街道を楚の雲がかかるそのまた西にある 潤州に向かおうとしている 川辺の春の風光の魅力を以てしても、 旅立つ人を積極的には、引き留めておけなかった。 草の青々と茂った春の風情を以て、 あなたの乗る馬の蹄(ひづめ)の足取りを見送ろう。 【作者略歴】 劉長卿(709~785) 河間(河北省河間県)の出身。字は文房。733年に進士となる。 性剛直で権力者に逆らい投獄され、 南巴里(広東省茂名県の東南)に尉にながされたが、 その後官に復して隋州(湖北省隋県)の監察御になった。 詩文に長じ、特に、五言に優れ「五言の長城」と言われた。